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Green Fortress

プログラマーのポエム隔離所

大学の先生のキャリア論なんか信用しちゃいけないって話

少し今更感があるが、以下の様なエントリを目にした。

【理系就活】就職先を告げたら研究室の先生の猛反対された話 - 大学院生のネットワークなブログ

よくある話で、ベンチャーに就職しようとしたら教員に猛反対されたという内容である。

その後、彼は悩んだ末にベンチャー企業に就職することを選んだようだ。

理系大学院生が専門を捨ててベンチャー企業に入社する話 - 大学院生のネットワークなブログ

私はこの決断についてはどちらの道にも利点と欠点があるのでそれをきちんと秤にかけて検討できたのならばそれでよいと思う。

ただし、先生に言われたことに打ちのめされるのは仕方ないとしても、それを正論と考えるのは賛同しかねるのでここで個々に反論しようと思う。 私のキャリアは話せば長くなるレベルで紆余曲折しているので、元請けSI、大手ソシャゲ、無職、フリーター、地方中小SI、Webスタートアップの経験があるとだけ言っておく。一応の得意分野はあるが凡庸な20代のWebエンジニアと見ていただければと思う。

ちなみに予め言っておくと、私は高専・大学教員のサラリーマンに関するキャリア論は直接薫陶を受けた先生も含めて一切信用していない。

1. 定年まで会社があるとは限らないよね?

これはその通りであるが、価値判断上中立であり、大企業が有利である根拠にはならない。

これを元に資本力や業界シェアのある大企業こそが有利であるという考え方はわからなくもないが、万が一そこから排除された場合はとてつもないダメージを被る。逆にベンチャー企業であれば、役員出世ルート以外で会社そのものにどっぷりという考え方にはならないはずだ。もしこの会社がなくなったら、という想定は常に考えて然るべきである。 今シャープが虫の息であることを10年前に予見できたのであれば、その目利きで大企業を見定めてもいいかもしれないけど。

2. (会社が潰れるとして)いざ転職しようと思った時、こんな会社じゃ転職市場は評価してくれないよ?新卒でいい会社に入れなかった落ちこぼれだと思われるよ?

日本の9割の企業は中小企業である。中小企業の中で人材が循環することは何ら不思議なことではない。 特に景気補正も相まってIT業界の流動性は目覚ましく高くなっている(今後もずっとこうであるとは限らない点には注意が必要である)。

それ以上に、「能力」ではなく「会社」で評価してもらおうという考え方の時点で底が浅い。典型的な就社思想だ。

3.実力を付けたいと思っても、優秀な上司がいないとダメでしょ?大企業には優秀な人材が集まってきて、その中には更にとんでもなく優秀な人もいる。成長スピードは大企業の方が早いよ?

この文脈の「優秀」とは「学校の成績がよかった」と置き換えてほぼ問題ない。高専・大学の教員で優秀なサラリーマンをその文脈以外で理解している人間は非常に少ない。 私の経験上、成績の良さと仕事の優秀さは相関しない。 出身高専の成績レースで5年間最上位グループに居座り続けたくせに自分の能力の問題で新卒の会社で見事に落ちこぼれたので自信がある。

まあただ、地方の下請SIはほんとに酷かったなあ…そういう側面もありはする。

また、大企業であればあるほど、何をやって何を身につけられるかは運の指標が大きくなる。 新卒での配属はほとんど予備情報なしに反映されるかもわからない自分の希望を人事に伝えねばならない運ゲーであり、そのくせ社内でのキャリアの軌道修正は結構難しい(自分はやっていないが、伝え聞く話を総合するに社内公募は転職並みのエネルギーを使うと思って相違ないと思われる) ものすごく良い職場で優秀な人に指導を受けられるかもしれないが、ものすごい閑職や敗戦処理に回される可能性もある。

逆にベンチャーであれば自分の上司が誰で何をやっているか、自分が採用されたら何をすることになるかは面接ではっきりわかるしちょっとインターンにでも行けばさらに精度があがるだろう。もちろん、それが自分と合わない場合もあるだろうが運の占める割合は少ない。

4.大企業の社員や公務員になるのと、どこの馬の骨とも知らない企業に務めるのでは、社会的信用がまるで違うよ?

否定はしない。ないよりはあった方がいいに決まっている。 最初に大企業に入ってカンバンを利用して人脈を深めるというのもよい考え方だ(私の場合有効活用できなかったのでつくづく惜しいと思う)

ただし、大企業やキャリア官僚出身で、でかいカンバンに溺れた結果自分の実力を見誤った人間がこれまでに何人もいることは今更指摘するまでもないだろう。組織の実力は決して自分の実力ではない。

5.一度社会の下流へと入ってしまったらそこから上流には行けない。新卒で入る会社というのは本当に重要だ。自分だけならいいかもしれないが、結婚相手や子供にまで苦しい思いをさせることになるよ。

少なくとも中小企業から大企業への転職が難しいことは確かである。私も今更日本の大企業に出戻れる気はしない。 しかしこの発言には「大企業は優れた人間が優れた仕事を高い給料で行い、中小企業は劣った人間が劣った仕事を低い給料で行う」という思想が透けて見える。いつの時代の話をしているんだという気になってくる。

もちろん、ただの零細企業ベンチャーを称しているような場合もあるが、真に優れた技術を求めてベンチャー企業に名だたる大企業が取引を乞うケースもあるし、大企業と互角以上に渡り合ってシェアを拡大し、新たな大企業となるケースもある。 これは決して可能性の高いと言える内容ではないが、規模に劣る存在が対象を絞ってワンチャンに賭けるというのは当然の戦略である。

最後に、私から筆者に月並みなアドバイスを贈ることにする。

  • ベンチャーに行ったからといって自分が成功するとは限らないことは決して忘れてはならない
  • 自分のキャリアデザインを1社で完結させるべきではない。そうでないならばベンチャーに「就社」しただけに過ぎない(成功した結果1社に留まるのはよい)
  • 中小・零細企業でダメなところは本当にダメなのできちんと見極め、マズそうなら見切りをつけたほうがよい
  • 定期的にキャリアを棚卸しし、転職市場で評価される人材になることを心がけるべきである
  • 仕事のせいでメンタルが壊れるかもしれないときは一切躊躇わずに休職・退職しメンタルを整えてから新たなチャンスを伺うべきである