DLsite作品レビュー特別編 深淵の探索者(ネタバレあり)
この記事について
この記事はアドベントカレンダー関係なく書きたくなったので書いた記事です。 アダルト作品のレビューのためリンク先にR18ページを含みます。本記事に年齢を制限すべき要素はありません。
はじめに
今回の作品は深淵の探索者です(※リンク先R18)。
前々から天音蓮人の絵は割と気になって定期的にチェックしていたんですが、どうも最近はRPGずっと作っているなとは思いました。
ツクール系はそれこそDLsiteや旧DMMでエロが隆盛する一時代前のフリーソフト時代に散々やったのでもうお腹いっぱいかなとチェックするかどうか微妙なラインを推移していたんですが、どうもやたらRPGとしてしっかりと作り込んでいるという下馬評や生活苦の天音氏にサークル主が私財を投じて食い扶持と仕事を与える姿勢に感銘を受けて購入に至りました。
おのれ天音蓮人ォ!この週末は貴様達によって破壊されてしまった!
というわけで発売直後から最小限の睡眠と食事でぶっ続けでプレイして20:00頃にクリアしました。難易度はヒロイック(上から2番目)です。
ネタバレなしの概要
RPGやアクションRPGにおいてキャラクターの容姿がかわいいというのは清涼剤として大きなアドで、多少ゲームの出来が悪くても補えるものです。
特に洋ゲーにハマると累計数百時間ゴリラみたいなごつい人間しか視界に収めてねえなと散々遊び倒した挙句にふと我に返ることがあります。
その点本作はメイン4キャラ全員かわいいというのはゴリゴリのRPGに神経をすり減らしている中でも非常によい気分でプレイできましたし、アイテムやスキルを集めてキャラクターを強くしたいという欲求にプラスの影響も与えられます。序盤はこいつら大丈夫かよという不安がありましたが、ゲームの進行とともにパーティーメンバーの人間関係が良い方に転がっていっていい意味で印象も変わりました。
探索範囲を広げて敵を倒し、クエストをこなし、金を集めて装備を買い、レベル上げやアイテムでスキルを増やし、という一連の流れが病みつきになるほど楽しく、よくできています。時にはダンジョンのど真ん中でにっちもさっちもいかなくなってハラハラしながら逃げ帰ったり、道がわからなくなって進むか退くか悩んだり、レアモンスターが想定よりもずっと強かったので泣く泣く撤退したり、疲弊ガスにやられてボロボロになりながら帰ってたら手持ちの強壮剤で治療できることに気づいたり…手探りであるがゆえに生じるありとあらゆる行動が充実したプレイヤー体験を生み出してくれました。できれば次やるときは記憶消したいですね。
特におすすめしたい人
RPGは好きで、パーティーキャラクターがかわいいことを望む人にはとてもおすすめです。RPGとしてきちんと金を出す価値あるレベルに仕上がっているので楽しめると思います。
エロだけのために買うのは割高かもしれません。
ここから下は手加減なくネタバレ評価するので未プレイというか、プレイ予定の人は見ないほうがいいです。
私はいち早くプレイした体験を開帳したいので書きますけど。きっとプレイする上では知らないほうが楽しい。
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ここからネタバレあり
評価(エロゲーとして)
エロRPG系は元々専門外で、それ以前はそれこそレベルジャスティスとか巣作りドラゴンまで遡ってしまうのですが先人の観点は気にせず思ったままに評価します。
私の感想として、「純愛やりたいのか凌辱やりたいのかの軸が定まらず、プレイヤーの方針を定めるインセンティブがない」「エロをハクスラのシステムに落とし込めていない」というのが目立った所感です。
伝え聞くところによると他のエロRPGでは非常に頑張ればヒロインを処女のままクリアできるなどの縛りがあるようですが、本作の場合は売春イベントで金稼げたり、人助けクエストに出向いたら問答無用で犯されたり、強制イベントでガンガン本番が入ったりする上にレイプされたことがフラグになってキャラクターが彼氏作って純愛セックスしたりするのでひたすらキャラクターをひどい目に遭わせることも処女縛りも純愛だけさせることもおそらくはほぼ無理で、プレイヤーとして「お前は今からエロい目に遭ってもらうんじゃグヘヘ」という目線と「なんてこったレイプされてしまうなんて!だが立ち上がれお前はそんなもんじゃないはずだ!」という目線を必要に応じて切り替えなくてはならないのでだいぶ混乱します。特にシナリオが全年齢でも成立するくらい一本筋が通っているのでなおさらレイプされると後味が悪くなって自分で作ったゲームで自分で没入感を損ねているちぐはぐ感を感じました。ここらへんはエロでないと売れないプラットフォームの仕様とかあるので難しいところではあるのでしょうが…
あと本作、エロだけを求めて難易度を最低にしても探索面が割とシビアな点のフォローになってないのでひたすら難易度チートでプレイした人のプレイ感も聞いてみたいですね。たぶん深淵で迷いまくって途方に暮れるのがオチだと思いますけど。
フォローしておくと、非常にレイプ映えするオヴェリア、堅物だがマタタビに激弱な雛菊、ショタ喰いのファウ、流されやすく気が多いレーシェ、とシチュエーションの中でキャラクター性はとてもよく出ていました。
ちなみに、数あるエロシーンで1個だけ、シーン後に能力が上がるものがありますが効果は少なくてももうちょっとあったら気分的に嬉しかったです。
評価(ハクスラとして)
本題に入ります。ここまでのすべての文章は以下を書くための前振りにすぎない。
ガチのRPGとしてお出しされたらガチのRPGとして評価しないわけにはいきますまい。
(1/29追記)おことわり:LV30到達前にクリアしたため、ラスボス撃破後に確認したところ、いくつかのスキルを未収得のままクリアしたようです。それらのスキルを踏まえると最終的な評価が変更される可能性があります。
本作は固定で超でかいダンジョン、グレードが3種類ある宿屋、キャラ死亡の仕組みを簡略化した蘇生所、松明やマップ制限、トラップなどの探索要素、回数制限性の魔法などのゲームデザインにウィザードリィの影響を強く受けているのが伺えます。ちなみに私のウィザードリィのプレイ経験は非常に浅く、小学生の頃友達がやってる時に自分も作ってもらったらよくわからないうちに灰になっていたという程度です。
さて、本作のシステムはそれぞれの仕組みはよいのですが、自分で自分のシステムを否定しているものが多いことが非常に目につきます。
まず、宿屋システムは別荘解禁と温泉解禁によって空気になります。
松明システムは常に明かりがある地下3階と水中によって空気化し、以後は魔法で代替すればよくなります。
ダンジョンの位置関係を必死こいて覚えて効率のよいルートを覚えたと思ったら冗談みたいなショートカットがどんどん追加されて知識が陳腐化します。
VPシステムのおかげでギリギリまで生き残ることができるので全滅して蘇生所に飛ばされることは無縁です。念のために言っておくとVPシステム自体は戦闘不能のジリ貧感を薄めながらダメージコントロールできるのでとても好きです。
深淵への侵入経路のうち、ヘカテー宅にワープが位置的に半端(可動橋側入り口とかなり近い)すぎてシステム的な意味を見出せませんでした。
街中なのに宿屋がなく、キャンプしかできないのに治安激悪の町が現れたと思ったら恐ろしく簡単なサブイベントであっさり無料の宿泊が解禁されます。
キャンプは配置が少ないせいで、「ピンチだったけどキャンプがあったおかげで助かった」ということがほぼありませんでした。特に地下3F 地上のは出てくるのが早すぎ、水中にはキャンプなし、地下4F と地下5Fは出てくるのが遅すぎで、これによって完全に会話イベントを埋めたり、セーブしたり地上に戻ったりするだけのシステムになってしまいました。
あとマップの閲覧に制限を入れてるのは意図的だからいいんですが、「同じ階のワープ床」と「一方通行エリア」を表示してほしいのと、「閉じる」表記とフロアが被るのはどうにかしてほしかったです。地下3階~4階付近の難易度上昇と同期してシステムが喧嘩を売ってくるのはかなり面倒くさく、それにゲームの歯ごたえが若干依存しているところがありました。
(1/28追記)ワープ床はVer1.1からマップ表示されるとのことです。やったぜ。
戦闘・育成システムは基礎はとてもよくできています。その一方で以下のような自己否定を入れてきます。
- 敵に耐性が強いボスが多すぎて特にレーシェが空気化しやすい
- 敵の主要なダメージソースが極端に属性攻撃に寄っている上にデバフ手段が少ないために対抗手段が少なく、雛菊がほぼバリア係になる
- おまけにそのせいで回避ビルドと防御ビルドが死んでる
- 終盤ボスに物理攻撃耐性持ちがいるせいで有用な武器が限定される
- 敵の状態異常がエグく、種類が多いので回復しにくい予防しにくいと非常にメタりにくい
- 終盤のクエスト報酬と売春イベントのコスパが良すぎてあっさり高額武器が買えてしまう
- 魔導書を作る際の巻物の入手経路が極端にショップに依存しており、現金ゴリ押し感が強すぎる。収拾によって魔導書を作れるようになったぞ!という序盤の楽しみをもう少し連続的に提供してほしかった。
これらの制約はプレイの多様性や幅を狭めかねないので多様性を保つ環境作りを意識してほしいです。全員がグリモワ魔法によって使用魔法を増やせるのはアクセサリー1枠という制約と引き換えにキャラクターの役割を増やせるのでとてもよい仕組みでした。
あとオンラインマニュアルでステータス異常はアイコンがありますが、属性アイコンも説明を入れてほしいです。特に物理攻撃、貫通、吸収の属性を示すアイコンが何を意味するのかと聖属性と破邪属性の区別が非常にわかりにくかったです。意味がわかりさえすればペルソナ1くらい属性多くてもどうにでもしますので。
キャラクターの戦闘能力ですが、純アタッカーのオヴェリアはいいとして、雛菊とファウの仕事が多すぎて過労死することとボス相手にレーシェが空気化することが気になります*1。麻痺やスタン通ればめちゃくちゃ強いんですが、ボス相手に通っていい異常ではない。そこで役割が終わってしまってとりあえず蔦巻いたら暇になる。相手を問わず使える攻防のデバフや暗闇、風邪、沈黙、恐怖などの通りがいい異常撒きを持ってきてほしいです。
あとシステム的な面では属性耐性低下を敵専用で治療手段をほぼ封じた状態で撒いてくるのは狙った仕様だからいいとして、補助魔法の効果延長手段が欲しいです。言ってしまえば属性バリアの効果ターン伸ばしたいだけなんですけど。
終盤のピクセル集め、雰囲気といい8BitのBGMといい最高なんですが、グリーンピクセルで作れる武器がないような気がします。
総評
やたらたくさん欠点を書いてるように見えますが、本気でゲームやったらこのくらい気になることが出てくるなんて名作商業ゲームだって日常茶飯事です。
強大な敵と喧嘩売ってくるシステム相手に持ってる手札でどうやってゲーム壊すかを考えるあの思索のひと時は紛れもなくRPGやってる時の醍醐味を感じました。
*1:グリモワ使ってバッファーやると強いんですが、そこでパターン化したくない