Green Fortress

プログラマーのポエム隔離所

Civ6プレイメモ ズールー編

Wikiでプレイレポ書くと手間がかかりすぎてエタることがわかったのでさっとメモ書きにする。

ズールーは全ての要素が戦争に向いた戦争特化文明だが、使っていて思ったのは最小の手間で軍拡できるという点である意味内政文明なのではないかというところだ。

中世で軍団が解禁されるというのは下手なそこらへんのUUより強力で、金がいらないだけでなく兵種の組み合わせも自由で、太古に安く作った戦士や弓兵があっという間に化物に成り果てる。

しかも半額兵舎のイカンダがあるおかげで古典大将軍が無理なく出せる。中世でも大将軍剣士軍団で余裕で渡り合えるし、カタパルト軍団を合わせれば都市の防壁など紙くずのように吹き飛ぶ。

剣士軍団を前に出しにくくなってきたら初期ラッシュの防衛で使った弓兵を弩兵軍団にしてやれば瞬く間に敵が消える。 敵が溶けるのが早いから必要な兵力が少なく、結果として少ない手間でガンガンAIを飲み込むことができる。その間暇な都市はじっくり内政で遊ぶことができる。

ただしさすがに太古はつらく、AIの初期ラッシュに対してはいつもどおり気合で持ちこたえる必要がある。このメモのもとになったプレイでもいきなりモンゴルに戦士ラッシュを喰らい、弓兵でカウンターかけて2都市奪ったところで騎乗兵を出されて講和して軍団待ちというパターンだった。

ちなみにこのプレイでは2文明飲み込んだところで飲み込んだポーランドカトリックが自分以外の国を席巻していたので自分の宗教で塗り替えて宗教勝利した。

JAGMO 幻想郷の交響楽団に何回か通った体験からの東京オペラシティ座席考察

前書き

吹奏楽からすっかり足を洗い、生涯コンサートなんぞとは無縁と思っていたがJAGMOが主催する幻想郷の交響楽団だけは唯一の例外として習慣になりつつある。 2回すっ飛ばしたので5回中3回参戦(昼夜両方行ったのは今回が初めて)したことになるが、まず面食らったのは東京オペラシティのコンサートホールである。 縦長に四角いホールにステージの真上には三角の非常に高い天井、申し訳程度のバルコニーはあろうことかステージに対して直角を向いており、ちょっと悪さをすれば上からポロリと落下できそうなほど狭苦しい。

これまでの部活動経験ではシューボックス型のコンサートホールを使う経験がなかったのでどこに位置取ればどんな音が聞こえてくるのかの勝手がわからない。 そこで実際にグレードを変えた席を色々試すことでなんとなく特性が見えてきたので共有しようと思う。

SS席

自分が座ったのは2階中央後で、3階の床が天井に迫っている席。 一番曲がまとまって聞こえ、自己主張が強い音も遠いおかげで減衰して角が取れて聞える。 この席で聞く弦楽器のハーモニーはとても美しい。ピアノもよく聞こえる。

一方でステージから遠いためやや迫力不足なところがあり、刺激を求める人には向かない。演奏側の熱気とどうしても温度差が出るせいで、この席で知らない曲を聞くとクソ退屈なので多少手間でも予習したほうが楽しめる可能性が高い。

S席

座ったことがあるのは1階右側の中ほどか後方。 いかんせん記憶が曖昧だが昔の自分のツイートを見るにいまいち音響に満足しなかったらしい。 確かやたらパーカッションが目立って聞こえたのと、フルートやオーボエはかなり聞きづらかった記憶がある。

(2018/12/10)追記

夢幻音楽祭に当日S席で入ったところ、1階の左側2列目になった。 近いとそれだけ多くの情報量が得られて面白い。マイクはただ単に録音用なんじゃなくて普通にスピーカーから音出てるのがわかるし*1、たぶん目のいい人なら楽譜読める。ステージ入場直前でスタッフさんが「よろしくお願いしまーす」って指示するのも聞こえる。さんざん練習するアマと違ってプロだとぶっつけ度が高いからそれだけローコンテキストなんだろう。

誰もがご存知の通り最前列というのは音響的にハズレで、音がまとまって聞こえない。俺に向けて飛ばしてる音じゃないんだなって感じ。 ただ収穫もあり、まずホルンのサウンドがキレッキレで迫力があった*2。また、普段やかましいよと思うドラムとティンパニが抑えられ、フルートの音もよく聞こえる。鍵盤やコンガも目立っていた。しかし、トランペットの音がこっちに向けられていないというのはなんで東方聞いているのかわからなくなるので直前まで行くかどうか迷うようなやっつけモチベーションでなければもっと良い席狙うべきだなと思った。

(追記ここまで)

A席

座ったことがあるのは2階左側後方と3階左側中ほど。 ステージと身体が違う方を向いているというのは凄まじいフラストレーションで、下手をすると視界が床に遮られてステージが一部見えない。

反射板に近いというのが長所で、ここで聞く音は強烈な迫力があって病み付きになる。知らない曲でも勢いで押し切ってくれる。物理的に近い特性上、フルート、オーボエファゴット、チェロ、コントラバスあたりの音も追いかけやすい。

一方で、床に遮られている楽器の音はどうしても聞きづらく、左側であればバスドラムティンパニ、鍵盤、ピアノあたりのインパクトがかなり地味になる。コンマスが見えないのも結構ストレス要素。

後書き

今の所どの席も不満点はあるが、強いて言うならA席で上の方から聞くのが一番楽しめている。 しかし本質的には座席よりも演奏の感動や原曲との差異を早口で語れる相手に不足していることが一番の問題であり、ここを解消できればさらに楽しめるんだろうなというところがある。あと地霊殿で原作プレイ止めたのももったいなく感じてきたので少しづつやる。

*1:ピアノ、フルート、ファゴットなどが音量に下駄を履いている

*2:コンサートの最後で指揮者が各パートを立たせて拍手〜ってやるときに真っ先にホルンを示したのでもともと腕利きだった可能性もある

【ドミニオン】サウナと銀が2週目に揃う確率を計算した

二人戦でサウナアヴァントが止められなくてボロ負けして以来気になってしょうがなかったので初手サウナ-銀とした場合に圧縮ができるかどうかを雑にRubyで計算した。

"3ターン目の手札にサウナ銀が揃う確率"
0.152
"3ターン目のサウナで銀が引ける確率"
0.038
"3ターン目にサウナ銀ができる確率"
0.19
"3ターン目にサウナ銀が来なかった時に4ターン目の手札にサウナ銀が揃う確率"
0.476
"3ターン目にサウナ銀が来なかった時に4ターン目のサウナで銀が引ける確率"
0.119
"3ターン目にサウナ銀が来なかった時に4ターン目にサウナ銀ができる確率"
0.595
"デッキの2周目にサウナ銀ができる確率"
0.672
"デッキの2周目にサウナ銀が出た上で屋敷を圧縮できる確率"
0.475

ざっくり6割強。いけるようないけないような微妙な感じ。

ソースはこちら。走り書きなので汚い。

https://gist.github.com/Hiromi-Kai/5170ac856213b0b2e1bc5fdc5e3edaf7

(11/11修正)計算間違っていたので全体的に修正。

Twitterは「No Hate」よりも先にやるべきことがある

昨今、Twitterでアカウントの凍結が増えており、活動家からエロ絵師にITエンジニア、そこらへんのツイッターオタクに至るまでが凍結されるたびにTLがにわかに騒然としている。

例えば自称リベラルな連中は差別主義者*1の撲滅に忙しいようでTwitterにぎゃーぎゃー申し入れをしており、Twitterの代表もこれに応えたのか「No Hate」を打ち出して方針を明確にした。

もっとも、その凍結対象には自称リベラルな手合いも一部紛れ込んでいたので自分で自分の首を絞めるコントも一部では繰り広げられたらしい。これらはエロ絵師や相互フォローの知人の心配をしている自分にとっては対岸の火事にすぎない*2のでTwitterの代表はずれているなと思っており*3、そのことをDisったツイートがほんのり伸びた。

江川紹子氏などは言論プラットフォームとしてのTwitterの対応を批判しており、それに対し、それなりのユーザーが一企業のTwitterにそんな義務はないと批判を返している。

自分が論じたいのは言論プラットフォームがどうたらということではない。 ただ単にこれだけ節操なくアカウントが凍結されるとSNSとして根本的に信用ができず、言論以前のもっとカジュアルな事項でつぶやきたいことをつぶやけなくなることやそこで得た情報をいきなり失うことのリスクを強く危惧しているし、少なくないユーザーが同様の危惧を抱いているのではないかと考えている。

ここ数日の凍結では凍結に該当するツイートの抽出なども行うようになったとはいえ、未だ機械的に事前の警告もなくアカウントを凍結している事例も発生しており、そのたびに一般ユーザーからの信用を失っていると捉えるべきだ。

今の凍結の仕組みがどうなっているのかは知らないが、大量のデータを捌いているので誤検出の割合がわずかであってもユーザーの目線からはたくさんのユーザーが凍結されてしまうように見えるし、次は自分なのではないかという疑念を禁じ得ない*4。プログラムにせよ人の手にせよこれだけ誤検出するんだったらまずは警告を送ったり脅迫していないことを誓約させるような漸進的な対応をするべきであり、いきなり永久凍結するような雑な振る舞いをするべきではない。

また、Twitter自体苦境に喘いでいるとはいえ、ユーザーが集まり多くの投稿をするからこそ広告収益が得られ、データを活用した関連ビジネスに活かすことができる。

ユーザーが離れて過疎ったり、あるいは自分の言いたいことを言えなくて虚飾と欺瞞にまみれたりするようなSNSから一体何が得られるというのか。 トランプの当選も、Brexitも声の大きい人が作ってきたなんとなくの世論と実際の投票行動は一致しなかった。 「ツイートを分析してもユーザーの建前と本音が異なるので役に立ちませんでした」では話にならない。Twitterからユーザーの本音が得られないことで損するのは彼ら自身である。

Twitterが第一にやるべきことは「ユーザーの不安の払拭と信用の回復」であり、ヘイトがどうたらなどということを心配している場合ではない。

しかしだ、ここまで書いておきながら日本法人には凍結のオペレーションに関与できないのではないかという説が聞こえており、このチラ裏意味ないじゃんという感じである。英訳するか?

*1:そりゃいることはいるがあんな誤差みたいな存在の対処のためにこちらに迷惑が及ぶのは御免被る

*2:とはいえ事の発端は彼らなんじゃないかと考えると余計な事しやがってという思いは強い

*3:それに加えて肩書が一切書いてないことや認証マークがないことなどが「この人は代表を名乗っているだけの一般人なのではないか」との疑念を最初に抱いた

*4:例え暴言とは無縁な人間でも童貞を殺す服だのそげぶだのピリヨだけを殺す機械だの「殺す」を含むスラングと一切関りがないと断言できるユーザーはそうはいまい

K課程のラボ生活について

この記事はUEC Advent Calendar 2016 - Adventarの8日目の記事です。 昨日のid:kamuridoさんは面識こそありませんが歳の近いご同業みたいなのでお互いがんばりたいですね。 夜間大学関連でニッチな検索需要を満たす本ブログ、今回のお題は私がちょうどB4ということで、研究室の生活についてレポートします。

配属について

K課(先端工学基礎課程)の卒業研究は選択科目で、受けなくても卒業できます。 K課そのものは研究室を持たないので、他の学科の受け入れてくれる研究室に転がり込む形になります。 もうそろそろ新カリキュラム準拠なのでどこまで今のやり方なのかはよくわかりませんが、旧I科(情報工学科)は配属システムで希望する研究室のK課・留年枠に収まるように志望する必要があります。 私の場合は競合しなかったのですんなり決まりました。

一週間の過ごし方

4年になってから週に2回輪講(ゼミ)があり、それを除いた昼間に仕事をやって、残った講義を潰して、その残り時間で研究をしています。 前期は若干気合入れて仕事上がりにも顔を出すようにしていたのですが、そのうち夜は自宅でくたばるようにして土日に研究室に篭もることが多いです。また今年も紅葉見に行ってないな…

輪講について

前期は型システム入門の原著であるTypes and Programming Languagesを担当ごとにやってました。 関数型プログラミング言語はメインでは書けませんが基礎くらいは勉強していたのと、英語もほんのり覚えがあったのでまぁうまいことやれるだろうと高をくくってたわけですが、 まぁ炎上しましたね。誤訳に事実誤認に記載漏れ*1と総ツッコミでした。

TAPLの英語については私の感触では相当つらいと思いました。これでもTOEIC705点あって普段Githubとかでライブラリのマニュアルとかの英語は結構スイスイ読めると思っていますが、TAPLは辞書とにらめっこしてもなお何が書いてあるかわからない記述に頻繁に遭遇しました。

訳書を書かれた方でさえこのように述べています。 TAPL の訳本「型システム入門 -プログラミング言語と型の理論-」が発売されます - まめめも

すでに TAPL をご存知の人にぼくが語ることは正直あまりないのですが、一言だけ。「TAPL の英語は簡単」は大嘘だと思います。 かなり慎重に選ばれた繊細な英語表現だらけで、よほど英語できる&知識のある人でない限り、誤読してるところがあるはず。

知らない概念を知らない言い回しで学ぶのはちょっと難しすぎました。2回目は時間がなかったので訳書をカンニングしながらなんとか凌ぐ羽目に…*2*3

内容の理解としては途中で完全に振り落とされた感じがするので日本語版買っておさらいしたいですね。

研究内容

うちのボスが提唱した理論のScala実装の拡張と有用性の検証をしています。K課のカリキュラムと野生のプログラミング経験程度で理論と正面から殴り合うのは知能が足りないと思ったので、ひたすら手を動かすという意味でおあつらえ向きかなと思っています。ちょっと年末缶詰めしないと危なそうですが…

進路について

配属当初は院進を検討に入れつつどちらでも取れるようにして様子を見てきましたが、夏頃に院進を正式に断念しました。 理由はだいたい以下のとおりです。

  • これまでの修士の研究テーマを見る限り、知能が足りない
  • 昼の科目数がそれなり以上にあって仕事と両立が危うい
  • 既に相当ギリギリのバランスで成り立たせているのにこれ以上内容が難しくなって拘束時間が増えたら確実に破綻する
  • 学費が倍になって働ける時間が減るのでキャッシュフローを維持できるかが不安
  • 修士をストレートで卒業した時に31歳でフルタイムに戻れるかが怖い

学歴を次のステップに進めるのは2年仕事しなくててもいいくらい超稼げるようになったらまた考えてみます。

息抜き

らぼめんにボドゲ勢がいっぱいいるのでドミニオンで殴り合ったりカルカソンヌで殴り合ったりドミニオンで殴り合ったりします。たのしい。 たまに訓練されたOBもやってくるので「ドミニオンの定石が見たいので本気でやって下さい」つってボコられます。たのしい。

終わりに

K課程と卒研両立させるのはうちの研究室に限らず、どう考えても大変ですが、研究然りらぼめんとの繋がり然り実りあるものだと思うので時間の許す方は頑張ってみてほしいなと思います。

次回は研究室OBにして私の研究の前任者、なのにそれを知る前にTwitterで相互になってしまった数奇なお付き合いのalstamberくんが担当です。

*1:めんどいし書かなくていいっしょと思って省いた内容が省略したら成立しない内容だった

*2:内容の都合でお蔵入りになりましたが…

*3:ついでに日本語版のみにある誤植を見つけて著者に報告したりもしました

10年ぶりくらいに「イリヤの空、UFOの夏」を読んで2

昨日は所用で4巻が読めなかったので今日読んだ。

特に、「夏休みふたたび・後編」と「最後の道」はほとんど内容を覚えてなかった。 過去に何回か読んだ時もショッキングすぎて直視できなかったんだろうと思う。 3巻の「水前寺応答せよ・前編」で日常が崩壊するのもショッキングだが、「夏休みふたたび・前編」で築いた仮初の日常が後編で伊里野の精神ごと完膚なきまでにぶっ壊れるさまは心を打ちのめした。 あの時の浅羽は無力感と焦燥感に囚われていたとはいえゴミオブゴミオブゴミでしかなかったが、挿絵にもなった最後の道の果てで自分の過ちに気づいて慟哭する様は胸を打つものがあったし、「南の島」ではヘタレなりに気持ちをきちんと打ち明け、ミステリーサークル作りでは先にUFOの夏を終えた水前寺に自分の意志を伝えて物語の幕引きをした。 こうして読んでみると読後感は切ないなりに決して悪く無い。

「夏休み」の破綻について

浅羽と伊里野とホームレスの吉野、猫の校長の小学校潜伏生活は一旦堰を切るとドミノ倒しのように崩壊していった。 吉野は伊里野に乱暴し(伊里野がレイプされたかどうかは根が深い論争になっていた)、現金の大部分を奪った挙句に警察に通報を行うも、自分も伊里野に腎臓を刺される深手を負っており、ホームレス生活を続けるには不安が残る。 つまりぶっちゃけ誰も得をしていないのだが、事の発端は潜伏生活がバレかけていることを危惧した吉野が浅羽がいないタイミングで伊里野に話を持ちかけてしまい、伊里野が頑なに拒絶したために口論の末争いになっている。 ここではコミュニケーションの仲介に浅羽がいればここまで最悪の事態に至らなかった可能性は十分にあるが、当の本人は買い物帰りに河原でエロ本読んでいた、というのがどうしようもなさを加速させる。 ついでに挿絵の目次にあった「Special Thanks:3人の女」というのが浅羽のエロ本妄想に出てきた女性を指していたことに今日やっと気づいた。

作中の軍事的衝突について

作中では少なくとも「エイリアンとの衝突」と「人間同士の戦争」の2つが描写されており、前者は作中のラストで伊里野の喪失と引き換えに決着がついた、と解釈をすべきである。 後者は案外細かく作中に断片があり、ざっくり推測するとこんな感じになる。

  • 日米韓は同盟関係である。ただし、作中に韓国軍の描写はない
  • 北朝鮮は敵対関係であり、過去に爆撃をしたことがある他、38度線で睨み合っている。他にも「共和国」なる国があるらしい。中国?
  • 4巻に帝都が何かしらの爆撃を受けた描写がある
  • 作中で一般人物が示唆する戦争とエイリアンとの戦いの時期が一致していないことから、これらは独立した動きであると推測できる
  • 「南の島」の前半で戦争の終わりを示唆する内容があるが、人間同士の戦いに関しては戦略目標を達成した(=北を打倒した)可能性が高い
  • 園原基地の軍縮も↑の描写を後押ししている

終わりゆく夏

地の文を読んでいると、旭日祭くらいまでは夏の暑さが強調されているが、それが次第に移り変わっている。「無銭飲食列伝」まではセミの鳴き声の描写があるが、「水前寺応答せよ」以降では探した限りでは見つからなかった。むしろコオロギや秋の虫の描写があり、完全に秋になっていることがわかる。 それに対して、着替えられずにずっと夏服を着ていたり、(祖父母の家目当てで)夏を追いかけて南に向かっている浅羽の拙い抵抗がなんともいじらしい。 海に行き着いて最後の道が完全に途切れ、一旦は現実逃避した妄想で心だけ南の島にトリップしていたが、「南の島」で妄想通りにはいかないまでも終わってしまった夏がほんの少しだけ蘇ることになる。 4巻の殆どを終わった夏を引きずってもがいていた浅羽は伊里野との最後の別れを経て夏を「終わらせる」という決意に至る。 そして物語の最後の最後に逃避行の最中に飼い始めた猫の校長が次の夏に失踪したことを告げて全ての幕が閉じる。 わずか3行程度の文章とはいえ、伊里野がいなくなっても次の夏が来る、という物語を読み終わった気分になってるところにほんの少し後ろ髪を引いていくところがまたずるい。 ついでに浅羽と伊里野の最後の別れも思いの外あっさりしていて、そのあっさり加減が名残惜しいが「南の島」自体が3分ロスタイムみたいなものなので仕方ないのかな、とも。

おわりに

6月なのにもう夏が終わったような心境になってしまった。研究進めないとなぁ…

(追記) 以下のページによると、出典は不明だが印象的な文章がある。 http://egfinal.jp/iriya.html#thema

この本は、作者曰く「おっさんが昔を思い出して読む話」だそうです。

中学生がアラサーおじさんになって無事に対象年齢になりました。 ええもう思惑通りのノスタルジーに浸れましたとも。

10年ぶりくらいに「イリヤの空、UFOの夏」を読んで

六月二十四日は全世界的に、UFOの日だ。

例えUFOの日の存在とそれが何時かを忘れてもUFOの日を思い出してフレーズを忘れることはありえないくらい刻みつけられた一文だ。 普段はそれでちょっと思い出してどこぞの掲示板でうろ覚えの思い出話に話を咲かせるわけだが、なんたる僥倖か今のラボに全四巻がひっそりと収まっていたので読んできた。 初めは1巻だけのつもりだったのにいつの間にか手が伸びて3巻まで一気読みした。 夜が更けて日付も変わってしまったので4巻は意識を整理した上で明日読む。ぶっちゃけ4巻の展開は昔から好きじゃなくてなんか勢いで読み飛ばしていたのでじっくり咀嚼したいという想いがある。 とりあえず居ても立ってもいられないのでポエムを書き散らす。

時間の経過について

1巻初版の発行日を見て笑いすらこみ上げた。2001年て。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンより3年先ですよ旦那。

挿絵について

絵のタッチ古っ! あと伊里野もう少し乳があった気がしたけど完全に思い出補正だった。 今の2次元の乳祭りを思うと間違いなく感覚がインフレしているが、当時はBカップがものすんごい巨乳に感じるくらいの若々しいメンタルだったので相応のバイアスがあったと思う。

本筋について

さすがに前半はお腹いっぱい。今回気になったのはここじゃない。

風景描写について

あんまりラノベの数を読み込んでないし、ハードカバーに至ってはさっぱりなので自分の観測範囲で話をするのは気が引けるが、季節感と風景の描写に関して秋山さんの筆は図抜けていると思う。俺が季節で晩夏が好きなのは絶対に本作の影響だろう。 地元はそこそこの田舎だが、その中のひとコマにいかにもありそうな描写を細々と差し込んでくるのはさすがとしか言いようがない。 自分は昔のことは連想を辿らないと記憶が取り出せない方なんだけれども、数年スパンで忘却していた「小学校の体育館の準備室から繋がっている半分地下にある用具倉庫の雰囲気」とか「ふとちょっとしたタイミングで学校近くの小高い山の頂上にチャリで立ち寄った」みたいなどうでもいい記憶が地の文を経由して蘇ってくる。単に用具倉庫や小高い山を描写すればいいというものではなくて、記憶の中に眠ってる細々としたひとコマを想起させるだけの精緻な描写があってこそのものだろう。

軍事技術描写について

中学生のころはFTPRSAブルートフォースも知らなかったし、ましてや軍事、戦闘機に関する用語なんてさっぱりである。 「なにがなんだかわからない」ながらに読んでいた箇所の意味が理解できるようになったのは成長だと思う。 相変わらず意味深なだけで意味がよくわからないキーワードもあるし、もともと細かいところはわからなくても勢いで読めるようになってはいるんだけれども。

「時代」は変わったのか

本作を読んでいて強く意識させられるのが、昭和と90年代の残滓である。 技術的に携帯電話が存在したといっても、90年代の小学校で持ってる人は誰もいなかった*1。中学校もまだ公衆電話+テレカの文化は根強かった。 浅羽の両親の「聡明なところもあるけど程よく脳が劣化してきてガサツなおっさん」と「穏やかで夫を立ててうわさ話に敏感なおばさん」が醸し出す雰囲気とか、家庭や部室のコミュニケーションの軸がテレビなあたりとか「ひとつ前の時代」感がハンパない。今もこういうご家庭あるのかな。 また、「原チャリをパクる、未成年飲酒などの不法行為をサラッと描写する*2」「破天荒キャラが女性を小脇に抱えて悲鳴を上げさせてるのにツッコミを入れるのは地の文だけ」「モブの一般市民との距離が近い」など、今の作品とのノリの違いを感じさせる。 ただ、根本的に昔のことを書いているのか、自分が成人して上京してるから地元を懐かしく思っているのかについては混同があるのでうまく整理できていない。

セカイ系について

正直このノリがもてはやされていた時期は肩の荷が狭かった*3エヴァはTV版と旧劇に関しては嫌いと断言できる。 アホなオタクでは理解できない断片的な内容に後半から胸糞悪くなるドシリアス、ヘタレ系コミュ症と無口系コミュ症と横暴系コミュ症が織りなす噛み合わない三角関係は見ていて胸が痛くなる*4。 それでも、嫌いだったとしても。 3巻の途中で日常が終わって世界が塗り替わっていく雰囲気にはいい意味で怖気を感じた。

登場人物の睡眠感覚について

徹夜しすぎ。作者の感覚が相当フィードバックされてると思う

「死体を洗え」について

今見てもわけがわからない。この話怖え以上のことを考察するのは野暮なのかもしれない。 (6/26追記)少し自分なりの整理がついた。 水前寺が「水前寺応答せよ」で退場する間際に浅羽に「アレは生きている」と電話をした。 作中の内容と合わせると、「撃墜されたエイリアンを見たから記憶を飛ばされた」ということだろうと思う。 自分は死体洗いのバイトをしたのは榎本で、そこで最後に見たのはエイリアンの死体だと思っているのでそのことが機密性を持っているとすれば、電話中に片方の女性自衛官が排除されたことも含めて符合する。 ただ、仮にそうだとすると榎本がなんで飯の肴にベラベラ喋ったのかの辻褄が合わないのと、狂ってしまった『木村』と榎本はなんで記憶措置がされなかったのかも疑問点になる。

総評

たまにはガッツリ懐古するのも楽しいものである。 実家に眠ってる当時の代物を掘り起こして一大懐古祭りをやりたい。というかCD-Rが劣化して破損してる可能性が高いので速やかにやる。

*1:作中では携帯電話の所持が著しく制限されていた

*2:最近はこのへんにうるさいオタクが多いのが気に入らない

*3:関係ないけど姉属性が流行った時期も個人的には冬の時代だった

*4:浅羽のヘタレ度は今やったら許容範囲外だと思う。そういう意味では時代は進んだ