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プログラマーのポエム隔離所

財務省から見る文教科学予算

Twitterを眺めていると、ここ数年、教育が予算不足であるとの意見をよく目にする。 大学の高い学費や返却の必要がある奨学金への批判や、研究予算の不足が叫ばれている。

一方で世界大学ランキングでの埋没への危惧や、大学再編対して文系軽視の姿勢であると反発する研究者などの声もインターネットで目にする。

これらの声をきっかけに、なぜ日本では教育の費用が不足していると言われるのか、その原因を知りたくなった。

日本の国家予算で印象的なのは国債費の高さやもはや崩壊していると言われて久しい社会保障費だ。 文教及び科学に関する費用が5.6%に対して32.7%の割合を占めている。 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.htm

他の国はどうかという比較を行いたかったので試しにアメリカと比較してみることにした。 以下のレポートによると2013年時点で社会保障に関連する支出は保健福祉省25.7%、社会保障庁25.1%。 思ったよりも支出が大きいという印象を持った。 http://www.dir.co.jp/research/report/place/intro-usa/20140605_008612.pdf

小さな政府と言われるアメリカでさえ予算の半分近くを使っているのだから、ここで社会保障費悪玉論を持ち出すことは難しそうだ。 日本の社会保障には大きな問題意識があるが一旦脇に置かざるを得ない。

それでは、教育に関する予算の中での配分はどうだろうか。 平成27年度予算案(文部科学省http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/03/11/1354604_1.pdf

主要な数字を拾い上げていくと、以下のようになる。 義務教育負担(1.52兆 28.6%) 高校就学支援(0.39兆 7.3%) 国立大運営交付金(1.1兆 20.6%) 私学助成(0.43兆 8.1%)

義務教育の費用が3割を占める。 憲法違反との指摘もある私学助成費用が5000億円にのぼるが、それでも1割に満たない金額である。

いくら少子化とはいえ、義務教育費を削減するのは難しそうであるが、その中で適切な予算配分が行われているかはチェックする意義があるだろう。

ここでは一つの視点として、財務省の以下の資料を紹介する。 文教・科学技術関係資料 平成26年10月27日(月) 財務省主計局 https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia261027/03.pdf

これは教育関連予算に関する財務省のコメントであり、文部科学省の縄張りに対して外野からコメントをしている。 (文部科学省がこれを受けてどう思っているのか気になるところである)

義務教育に関しては以下のようにコメントしている。

日本の小中学校予算は教員給与支出に配分が偏っているのが問題。予算構造を見直 し、義務教育予算の質を高めるため、既に国際的にも高い水準になってしまっている在学 者一人当たり教員給与支出を引き下げる方向で見直す必要。教員定数、給与水準両面で 効率化を図るべきではないか。

また、そうは言っても現在教員が非常に疲弊していることへの問題意識が様々な識者により挙げられているが、そのことについては以下のように述べられている。

日本の教員の年間授業時間(小学校・中学校合計)は、OECD調査対象30ヶ国中23位と低水準であ り、主要先進国(アメリカ、ドイツ、フランス)平均よりも小学校については2割程度、中学校については3割程度少ない。日本では授業以外の事務作業等(授業準備、職員会議、一般事務作業等)に多くの時間が充てられているという問題がある。 (注)イギリスについては、国としてのデータが存在しない。

教員の負担感を軽減し、より児童生徒に向き合う時間を確保するためにも、事務作業等の時間を短縮するための 取組み(業務の合理化・外部化、外部専門人材の活用、教職員一人一人の能力向上等)が必要。年間授業時間が 国際的にも低水準にある中で、これ以上教員を増員しても効率的な解決策にはならない。

異論もあるとは思うが、私はこの財務省の見解には納得感がある。ただ、公務員は民間以上に簡単には解雇できず、人材の流動性がないため、そのままの状態で外部人材を雇用すると人件費が増えるだけになってしまうだろうという懸念がある。 また、余剰人員の解雇をせずに人件費を調整すると新規採用の抑制が大きくなり、人材の年齢構造が歪になってしまうであろう(就職氷河期の民間企業でよく見られた)。そう考えると教員の人件費が高いからといってすぐに抑制するというわけにはいかなそうである。

今回の調査では簡単に大学の予算に回せるような費用は見つからなかった。また折を見て考察してみたい。